山伏修行を経て(EONJ_村長) Topics
【自己紹介】
私は秋田県秋田市の出身で、現在も地元で仕事をしています。2012年12月、38歳の時に株式会社ホワイトシードを起業しました。秋田の若者、特に美術大学卒業生が地元で働きたくても適した職場がなく、都会に出たり、関係ない仕事に就く状況を見て、「地元で働きたいと思える場を作りたい」と考えたのがきっかけです。
起業の経験がなかったため、企業活性化センターに相談したところ、「得意なことを活かして起業しなさい」と言われました。そこで、まずは車の洗車とコーティングの技術を活かして、事業をスタートしました。稼げるようになったら、美術大学卒業生の作品を全国に販売する計画でしたが、先輩経営者たちから「事業は選択と集中が重要だ」と助言を受け、洗車用品に専念しました。今では、楽天市場でトップの売り上げを誇る「ビューティフルカーズ」というブランドを展開しています。
EOには9年前、アクセラレータープログラムが始まった年に、途中から参加しました。5年前にEO North Japanのグローバル会員になり、その後は恩送りの気持ちで、コーチ運営側に携わり、現在のアクセラレータープログラムの発展に尽力しています。
【山伏修行に参加するきっかけ】
山伏修行に興味を持ったのは、1年前にEOのフォーラムのリトリートで羽黒山神社を訪れ、半日間の体験をしたことがきっかけです。その際、毎年夏に行われる本格的な修行があり、8/31には山伏名を授かるお祭りが行われると知りました。8/31は私の誕生日でもあります。孔子の「50にして天命を知る」という言葉に従い生きてきた私にとって、 この修行がまさに天命を知る機会だと感じました。
さらに、父の出身地である島根で、祖父が先祖を調べていく中で、最終的に山伏に行き着いたことも大きな理由です。ちょうど50歳になる今年の誕生日に山伏名を授かり、先祖とつながることが自分の使命だと感じ、修行を受けることを決意しました。
【修行体験について】
修行は8/26から9/1までの1週間行われました。前日に宿坊に泊まり、先輩方に助言をもらいながら準備を整えました。約120人の参加者と共に風呂もない場所で寝泊りし、ひたすら山を歩き拝所を巡り、勤行を行う厳しい日々。最後は「八朔祭」というお祭りで締めくくられ、祭りの最後には山伏が火を焚いて去る儀式が行われました。
仏教では教えを学びますが、神道は「感じること」がすべて。山を歩き、祝詞を唱える中で自然と感じるものがすべてということを修行中に学びましたね。
感じたのは、まず「人々の優しさ」です。修行は非常に厳しく、普通では考えられないような場所を登りましたが、そんな極限の中で、人の優しさに支えられたからこそ乗り越えることができました。
また、大勢で同じことをする意義についても深く考えさせられました。約120人が一緒に歩くのは効率的ではないかもしれませんが、前後から聞こえるほら貝の音で、先頭はあの辺りかとか、後ろはあの辺かなど、みんなの気配を感じることができたんです。人間は集団で生きる生き物と言いますか、本当にそうなんだなというのを改めて感じることができました。普段は個人主義な私にとって、この感覚は新鮮なものでした。
また、信仰の力を強く感じました。みんなでお経を唱え続けるうちに、自然とトランス状態になり、祈りから力が湧き上がってくるのを感じました。
特に印象的だったのは、8月30日の夜の出来事です。11時55分頃に目が覚め、ふと周りを見回すと、視覚障がいを持つ参加者が一人でトイレに行こうとしているのに気づきました。私はその方をトイレまで案内し、会話しながら一緒に戻ってくると、12時5分ぐらいに。気づいたら、自分の誕生日を迎えていたんです。
7、8年前、別の研修で「私は笑顔で一歩前に出る男です」という言葉を、自分の契約として心に刻みました。辛い時でも笑顔で、世の中をより良くするために行動する、そういう男でありたいと思っていたんです。ただ、その笑顔は、どちらかというと「辛いけど無理して笑顔を保つ」といった感じでした。しかし今回の山伏修行を通じて、本当の優しさを伴った笑顔こそが大切なのだと気付きました。そして、50歳を迎えた瞬間の経験で、笑顔で人のために一歩前に出続け、未来を良くすることが自分の天命だと確信したんです。
会社経営も同じです。限界に挑戦し続ける中で、優しさを持って一歩前に出ることで、道を切り開いていけるのだと感じ、思わず涙がこぼれました。
修行は、最低でも3回は参加しないと一人前とは言えないようです。そのため、来年もぜひ参加しようと決意しています。
【ご自身が思う東北の魅力】
東北、特に秋田の自然は特別です。羽黒山や庄内の風景は雄大でありながらもどこか優しさを感じさせます。外国から来た人々や東京から移住してきた人々も、この自然に魅了されることが多く、私自身もその魅力に強く惹かれています。
また秋田には伏伸の滝というのがあります。水はとても透明で、夏は涼しく、冬は雪景色が美しい。自然と一体になる感覚を得られる場所です。自然の中で過ごすと、葉っぱが流れていく様子に人生を重ねて感じることがあります。
今回の修行でも、自然の中で自分を見つめ直す時間は非常に貴重で、自分が自然の一部であるという感覚を強く持ちました。
【参加される方に一言】
山伏修行は、死んで生まれ変わるような精神的体験です。羽黒山の石段を登ることで、他の2つの山(湯殿山、月山)にも登ったとみなされますが、最初に石段を下るのは、死んで地獄に落ちることを象徴しています。そして、再び登り始めることで、新たに生まれ変わるという物語があります。
この修行を通じて自然と向き合い、自分自身を見つめ直す時間は非常に貴重です。山伏修行で、ぜひその過程をしっかりと味わい、生まれ変わる感覚を体験してください。昨年、私も初めて石段を登った時、その深い感動を味わいました。自然の中での自分探しが、きっと新たな発見をもたらしてくれるはずです。