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山伏修行を経て(EONJえびちゃん) Topics

【自己紹介】

私は山形県鶴岡市旧朝日村の出身で、現在合同会社danoの代表を務めています。ふるさとを次の世代につなげるため、地域に魅力的な仕事を創り出す「デジタルマーケティング支援事業」と、次世代に地域の未来をつなぐ学びの場を提供する「ふるさと教育みらい事業」をメインに活動しています。

私の根底には、仲間を集めて社会を面白くしたいという強い思いがあります。地元や東北から人が減っていくのを見るのがとても寂しく、そんな未来を避けたいと考えています。ふるさとを次の世代へとつなげ、ワクワクめぐる社会、新しい社会を編み出すために、ふるさとでの仲間作りに取り組んでいます。

EOへの参加のきっかけは3年前、事業を始めて2年が経過した時です。学生時代からお世話になっている経営者の先輩に「最近はどうだ?」と声をかけられました。起業当初の志へのスピード感が少し薄れてきているのではないかと自覚していた時期でもあります。

その時、先輩からの「EOには多くの仲間がいて、事業成長に必要なノウハウも得られる。仲間を作り、1億円を達成し、志に近づけてはどうだろう」という言葉に背中を押され、クオンタムリープに参加。そこからビジネスや人間性を磨き、今年春にEO North Japanのグローバル会員になりました。また、GSEAという世界の学生起業家向けのピッチコンテストの理事として、東北大会の開催に向けた活動も行っています。

【山伏修行について】

「秋の峰入り修行」は、山伏の修行の中でも位を高め、山伏の力を世界に還元するための修行です。毎年8/26から9/1に行われます。かつては母親の胎内で生まれ変わるまでの10カ月間にわたる修行だったものが、現在では1週間に短縮されています。

この修行では、山に入り、参加者全員で共同生活を送りながら、拝所を巡り、祝詞をあげていきます。今年は、北海道から沖縄までの18歳〜81歳まで、年齢も背景もさまざまな約120人が参加しました。山に入り、自分の身体感覚と向き合いながら、悟りに近づく修行です。

【参加のきっかけ】

元々地元文化への愛着や関心が高かったのですが、特にここ数年地元であったお祝いごとがきっかけの一つです。私の近所には、即身仏を祀るお寺があります。即身仏とは、厳しい修行の末に自らの肉体を捧げて仏となった方々のことで、出羽三山の修行や精神文化を象徴する存在です。昨年、この即身仏が400歳の誕生日を迎える節目の年でした。パンフレットの制作などを担当させていただいたのですが、この経験を通じて、400年前の先人たちへの感謝の念が芽生えました。

同様に、地元のお殿様が藩主として庄内地方に入部して400年という節目や、日本の近代化に貢献した松が丘開墾場の150周年など、地域の歴史的な出来事に関わる機会が増えていきました。これらの経験を通じて、地域に根付く文化の大切さを強く感じるようになったのです。

また、ニュージーランド出身の山伏、ティムの影響も大きかったです。山形の文化を深く理解し伝えている姿に、自分も地元の人間として、より地域の文化を理解し発信したいと強く思いました。

それまでは売上1億の達成に必死でしたが、目標を達成した今、改めて自分が何に時間を使うべきかを考えた時に、地元の庄内により深く入り込むことで、新たな視点が得られるのではと考え、参加を決意しました。

【修行を通じての気づき】

修験道は「道の文化」です。自ら歩くことで手に入れる感覚が全てです。今回の山伏修行で私が得たものは私の学びであり、参加される方それぞれに掴めるものが違うかもしれないことを大前提で聞いてもらえればと考えています。

まず感じたのは、自然に対する感謝や感動だけではなく、同時に恐怖や畏怖の感覚もとなりあっているものなのだと思いました。これはコントロールするものでもないし受け入れるしかないような大きな自然の節理のようなものがあるのだなと。山伏に「うけたもう」という言葉があるのですが、我々ができることは「承ること」だけなんです。自然に対して抗うのではなく、受け入れて生きることが大切だと学びました。

また、神仏との距離が身近に感じられたのも大きかったです。修行の中で、手を合わせて拝む時に、それは同時に自分を供養することにもつながると感じました。自分のために手を合わせることは、自分の中に神聖なものがあるのだと修行を思いました。

【山形の魅力】

山形や東北全体の魅力を一言で表すなら、循環の感覚だと思います。この地域では、季節の変化が非常に顕著で、それに伴う自然の循環を身近に感じることができます。この季節はこれを食べたほうがいいとか、この2週間で種をまかないと食べ物ができないとか。特に東北は季節の変化が激しいので、その感覚がとても強いです。

また、人間臭さと自然の一員であることが絶妙に混在しているところも魅力に感じます。山形より北に行くと世界遺産の白神山地があり、反対側に行けば新潟や関東方面など都会との距離が近くなる。その中間にあるのが山形です。 例えば、出羽三山信仰のような伝統的な精神文化と、現代的な農業技術が共存している様子は、まさにこのバランスを表していると言えるでしょう。 

特に庄内地域では、即身仏のような先輩たちとの繋がりを感じ、長い歴史の中で調和の感覚が育まれてきました。山形の魅力は「循環」と「調和」、そして「繋がり」にあると感じています。

【参加される方へのメッセージ】

修行を通して、経営には神というか、大いなるものがいるんだなみたいな感覚になりました。仕事を人間としての活動ではなく、自分の中にある神聖なるものから派生する「お役目」として捉えることで、より深い意義を見出せるのではないかと思います。それは、自分の中にある人智を超えた可能性や神秘性とも言えるかもしれません。これからの社会では、このような目に見えない力を活かすことが、より重要になってくるのではと考えます。

また、これからは地球に対して思いをはせないといけない時期が来ていると思います。温暖化や、コロナみたいな感染症など今まで起きなかった変化が起きていたり。物質的、情報量的にも豊かになってきているこの世の中において、改めて立ち返るべきは心、精神性なのではと思います。

参加される皆さんには、自分の内側に身体感覚を通して思いを馳せてほしいです。そこには、新たな気づきや感動が待っているはずです。感動したら手を合わせる、お祈りをする、静かに目を閉じて感じる、そうすることで見えるものが広がるのではないかと思います。